カラクイの使いやすさ

カラクイの使いやすさ

 はじめて三線をさわる人も、プロや実演家クラスの人でさえ、思い通りにカラクイを操作することに何も不自由を感じたことはないという方は少ないでしょう。

 三線の糸巻きは、棹にあけられた穴にカラクイという木の棒を突っ込んでその摩擦で弦をとめるという構造になっています。

歌の伴奏楽器でもある三線は、ひとの声に合わせてキーを合わせる場合や本調子から二揚げへと曲調に合わせて調子を変えるため頻繁にカラクイを操作します。

弦を巻き上げたり下げたり操作するうえで、カラクイが緩んでしまい、止まりがわるくなってしまうことがよくあります。

その原因はカラクイと棹の素材の相性、カラクイへの弦の巻きつけ方、演奏者の習熟度(扱い慣れているかどうか)などケースバイケースですが、そもそも三線が適切に製作されたものであるかは重要なポイントです。

実は三線のカラクイに統一した規格はありませんので、三線の棹ひとつひとつに合わせてカラクイを削り調整します。
棹の太さに合わせてサイズが異なる場合や、お店や職人によって好みや、考え方、技術的な差があるなど、どれも同じということはないのです。

当店では日々三線を製作したり、お客様の三線の修理にあたるなかで、試行錯誤を繰り返し適切なカラクイの取り付け方を研究してきました。


当店と他店のカラクイの違いとは

カラクイのみの加工というより、本体である棹のカラクイ穴の加工も含めて、ですが以下の点が他店と異なります。

テーパー

カラクイは円錐状に先細りになっていますが、その勾配・角度のことをテーパーといいます。そのテーパー比が高い(細い部分と太い部分の差が大きい)と差し込みやすいけれども抜けやすい構造になってしまいます。

抜けやすいカラクイはそのテーパー比に原因があると言ってもよいのです。
同じ糸巻きの構造の楽器であるヴァイオリンのようなテーパー比が理想だと考えていますが、当店では、三線の美しさを保ちながら適切なテーパーでカラクイを取り付けることを重要視しています。

先端部分を太くすることでゆるやかなテーパーにします。

カラクイの太さ

写真(上)中国三弦、(中)大和三味線、(下)琉球三線

三線のルーツだといわれている中国の三絃や、三線から改良、発展していった大和の三味線の糸巻きは太いのに対して、沖縄の三線は糸巻きは細いです。
 もちろんそれは三線の小柄なフォルムに合わせて美しさを出すために細くなった経緯があるのでしょうが、なかには太い棹に対しても細いカラクイを取り付けたりと特に計算されたわけではないつくりの三線も少なくありません。


 当店の三線は他店に比べて太めにカラクイを取り付けてありますが、

 などのメリットがあります。

カラクイを太くするにはカラクイ穴を大きくする必要がある。
右の三線がカラクイ穴を大きく加工したもの。

最近の三線業界ではギターのペグを利用した三線などカラクイ関連の開発が各店でしのぎを削っています。それだけカラクイのトラブルが多いということでしょう。

当店でも「緩まないカラクイ」など 、既成概念にとらわれず三線奏者が心地よく使えるカラクイ が開発できないか日々研究しております。

ただ、カラクイ部分に金属や樹脂素材のものを使用することに抵抗があるユーザーも少なくありません。

三線が沖縄に根付いて数百年続いてきたシンプルなカラクイの構造には意味があるのだと思います。当店では適切に製作すれば正常に機能し本来は使い勝手のよい構造だと考えております。

わずかな工夫で大きく違う”調弦体験”は緊張感ある舞台で繊細なコントロールを要する実演家やコンクール受験者には心強く、初心者の方には三線をたのしくはじめる上で必要不可欠なものです。
 
 初心者向けの三線から上級者向けの三線まで、使いやすいカラクイの追求は池武当新垣三線店の重要な設計思想のひとつです。